《MUMEI》

後日、
実家の立ち会いに続けて自営先の立ち会いにも赴いた。


先代である祖父が立ち上げた店舗兼事務所と、
広大な敷地には物置と大型トラック。

これら全てを、捜査官と確認していった。


オレは祖父を尊敬していた。

誰からもその人柄の良さは感じとれていただろうし、
誰よりも正義であった。

だから、名誉のためにここでの件は割愛させてもらう。

ただ、
幼い頃から見ていた事務所や乗せてもらったトラック、
敷地に植えられた美しい植木や植物が今は、
もう更地になり跡形もない。


1つ1つ、オレの知り得た大切な記憶、
風景、
思い出が目の前から消えていく。


これからも消え続けて、
やがて消化されるのであろう。


全てが終わる頃には、在りし日の美しい風景だけが残れる様、
できるだけ前を見て行こうと思いたい。

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