《MUMEI》 家の中は静かすぎた。 空気が張りつめ、 重く、 そして限りなく冷たい。 オレはまず1階の全ての電気をつけ、祖父母の部屋に向かった。 仏壇に手を合わせしばらく目をとじる。 何も聞こえない。 全てから遮断された、 見覚えのある偽物の風景。 昔からある祖父母のタンスも掛かったままの洗濯物も、 思い出の全てに鼓動がなかった。 静寂の中、 オレが見つけたものは畳に敷かれたホットカーペットの上、 家宅捜査中に落ちたのだろう髪の毛のついた赤い塊だった。 母の笑顔を思い出す。 いま聞こえるのは、静寂を無視した時計の音だけ。 台所に行きテレビのスイッチを入れると、 なるべく心が紛れる様にと音量を上げた。 流れる映像からは日常を感じさせる力と、 ギリギリと心を支配する淋しが飛び交った。 床は相変わらず冷たく、 靴下は意味をなさなかった。。 前へ |次へ |
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