《MUMEI》

双子はしっかりしているけど、まだ小学生だ。


確か、町民プールは小学生は保護者の付き添いが必要だった気がした。


「大丈夫。和馬君と孝太君がいるから」


(あぁ、それで…)


せいこちゃんが私をプールに誘った理由がわかった。

(きっと和馬に言われたんだろうな)


「だから、蝶子ちゃんはゆっくり寝てていいからね。
熱は…無いみたいだけど」

咲子さんは私のおでこを触って確認した。


「すみません、ありがとうございます」


「じゃ、行ってくるわね」

「「行ってくるね」」


「行ってらっしゃい」


私は横になったまま、三人に声をかけた。


(寝込むなんて、久しぶりだなぁ)


昔から、私が少しでも具合悪くなると、父が大騒ぎするから、私は自然と体調に気を付けるようになっていた。


(…て、風邪じゃないか、今回は)


この疲労感と脱力感は、風邪では無かった。


(俊彦のせいだ)


いきなり、昔話して。


いきなり、あんな、…あんな事するから。


勝手な事ばかり言うし。


『もう一度、俺を好きになって』


ドキンッ


(あ〜、もう!心臓うるさい!疲れてるんだから、静かにしてよ!)

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