《MUMEI》
ミスター光岳コンテスト
「えっ……えええええええ!?」

「お願い!2の3が優勝するためには谷口くんの協力が絶対不可欠なの!」

オレは頭を掻いた。困った顔をしてるのは言うまでもない。

「でも…何をすればいいのかわからないよ」

「何もしなくてもいいの!ただ立っているだけで構わないわ」

そう言うと、委員長は安心させるためか、ニッコリと笑って見せた。

『――春日有希の格好でミスター光岳に出場してもらえない?』

春日有希の格好って何だよってまず始めに思った。

つーかオレがその『春日有希』だよ!……みたいな。

まぁそんなこと言える訳もなく、仕方なく引き受けることにした。

多分ただのそっくりさんで終わると思うし、バレることはないだろう。

私立光岳高校の文化祭は、クラスごとで対抗戦が行われる。ポイント制だ。

例えば、売り上げ一位なら100P、二位なら50P、という感じで入ってくる。

それはミスターコンテストも同じだ。もしミスター光岳になれれば、ポイントがもらえる。

委員長の言ってた協力とはこのことなんだ。

他に協力できそうもないからしょうがない。自分の無力さにほとほとあきれてしまう。

「谷口。ちょっといい?」
永井さんだ。

なんとなくだけど、女の子らしくなっている気がする。髪型とか口調とか…。

……しばらく見てなかったからかな?

「どうかした?」

「ううん!谷口最近またよく休んでたから」

「あ…ごめん。文化祭のこととか全部みんなにやらせちゃって」

「それはミスター光岳に選ばれたら許す」

「ええっ!?条件きついよ!」

「大丈夫よ。谷口は春日有希そっくりだし」

「そんなことないよ!永井さんの見間違いだって」

「あたし目だけはいいのよ?見間違いだなんてありえない」

「だって本当に」

「……頑張ってね」

急に優しく言われてびっくりした。

永井さんのこんなに優しい表情は初めて見た。

それはとても幸せそうな、穏やかな笑顔だった。
ついオレもつられて笑った。

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