《MUMEI》

(い、今から?)


私は慌ててメールを打とうとしたが、…遅かった。


「「ただいま〜!」」


双子の元気な声。


「こら、まだ蝶子ちゃん寝てるのよ。
…あら、いらっしゃい」


咲子さんの声。


「こんにちは、蝶子ちゃん寝てるんですか?」


メールの主。


…元旦生まれの和馬の声。

(そう、寝てるの)


自室で聞耳を立てながら、私は和馬が帰ってくれる事を祈った。


「じゃあ、顔だけ見て帰ります」


「待てよ、孝太!」


(え? 孝太?)


孝太の足音や声は小さくて、正確な位置がわからなかった。


だから。


「何だ、起きてるじゃないか」


私がベッドに戻る前に、孝太が部屋のドアを開けた。

「勝手に開けないでよ!」

「…心配かけておいて、いい度胸だな」


孝太の目が鋭く光った。


「そうそう、メールも電話も見事にシカトしてくれちゃったし」


「そ、それは…」


「「蝶子ちゃん、いじめちゃだめ!」」


双子が和馬を掴んだ。


「あのね」


「「だめ!」」


「和馬、そっちは任せた」

「え〜!」


悲鳴を上げる和馬を孝太が睨んだ。


「…わかったよ」

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