《MUMEI》
和馬の本命
「…何が言いたいんだ?孝太。大体、何でお前が合鍵の事知ってるんだ?」


「お前が『あいつ』に自分で話したんだろうが。

俺は『あいつ』から聞いただけだ。

いい加減に仲直りしろ、迷惑だ」


「へ〜、お優しい事だな」

和馬はヘラヘラ笑った。


「大体蝶子にしても、今までの女にしても、『あいつ』以外は本気じゃないんだろ。

とっとと、本命とくっつけ」


(やっぱり、本気じゃ無かったんだ)


和馬が私にしてきたのは、本当にただのセクハラだったのだ。


「俺は、『あいつ』とお前の為にここに来たんだ」


「へ〜、俺は『あいつ』と離れたくて、ここに来たんだよ」


(この二人…)


どうやら、ただ『面白そう』だから、ここに来て、『シューズクラブ』に就職したわけでは無さそうだった。


「それで、蝶子ちゃんていう運命の相手を見つけたわけ」


和馬は孝太から鍵を奪い取り、私に握らせた。


「…俊彦の物だと思うと、奪い甲斐があるしね」


和馬もすぐに私の首筋の噛み跡が俊彦のものだと気付いた。


「和馬!」


「はいはい、帰りますよ。本当に、優しい『お兄ちゃん』だね、孝太は」


和馬は笑いながら出て行った

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