《MUMEI》
告白
「『お兄ちゃん』て…」


私は孝太を見つめた。


「あいつの本命は、蝶子と同い年で、俺の妹の琴子(ことこ)なんだ。

二人は幼なじみで、琴子はあいつがずっと好きだった。

あいつも琴子が好きなはずなんだ、絶対」


「…どうしてそう言い切れるの?」


「俺は、あの二人をずっと見てきた。だから…わかる」


孝太はきっぱり言い切った。


「蝶子の事もわかる」


(何で私?)


「雅彦が言ってた。お前と俊彦は『両想いなのにすれ違ってる』と」


「雅彦が…」


雅彦と孝太は、同じ立場だった。


「悔しいほど、わかる。

でも…

それでも、この想いは止められない」


「え…」


孝太が私をギュッと抱き締めた。


「…やだ!」


ドンッ


「あ…」


気が付くと、私は孝太を思い切り突き飛ばしていた。

「全力で拒絶か」


(私…)


「諦めない。


俺はお前が


蝶子が好きだから」


孝太はきっぱり言い切った。


「覚悟しとけよ」


私の耳元でとびきりの美声で囁くと、孝太は部屋から出て行った。


(何なの?!皆)


言うだけ言って、私を混乱させる男達に、私は怒りを覚えた。

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