《MUMEI》

(俊彦は、どうだろう?)


初めて会った時の俊彦を思い浮かべた。


(好き)


小学生になった俊彦。


(…やっぱり、好き)


中学時代の、学ランの俊彦。


(…好き)


高校時代の、私服の俊彦。

(好き、だったけど…)


あの事件で、嫌いになった。


再会した、俊彦。


(嫌い)


私の足に飛び付いてきて、気持ち悪かった。


(嫌い、嫌い)


何度も自分に言い聞かせた。


(…『言い聞かせた』?)


本当に、嫌いなら言い聞かせる必要はあるのだろうか。


花火大会の俊彦を思い浮かべた。


(どっちなの? 私)


昔の事は誤解だったけれど…


だからといって、一度大嫌いになって、五年間大嫌いをキープしてきたのに


いきなり


『誤解だったから許すね』

『やっぱり好きだよ』


と、人は簡単に言えるのだろうか。


(今更だよ…)


あれだけ俊彦を傷つけておいて、簡単に、いくら俊彦に言われたからって…


『うん、好きになる』


なんて


(…言えない)


私は、そんなに簡単に切り替えの出来る人間では無かった。


それに、付き合うということは、あの続きをすることだ。


(怖い)

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫