《MUMEI》 「松島と光は、保健室に行ってタオルを何枚か借りてきてくれるか?」 二人はぴったり同時に返事をし、保健室に向かった。 先生は『さて、どうするか。』という風に私を見た。久しぶりに目が合ったことに、緊張して私はすぐに目線を反らした。 「ちょっと、悪いな。」 そう声がかかった瞬間、私の体は宙に浮いていた。 「あ、あの!」 先生は、私の背中からお腹にかけて片側の腕をいれ、更に反対側の手をお腹から添えて、そのまま抱き上げた。頭が下がり、足もブランとなり、体がくの字になる。 「重くて、腕がちぎれそう・・・。」 「す、すいません!」 「ウソだよっ。」 すぐ近くの水道まで連れて来られ、五つほど並ぶ蛇口の1番右側、一段低くなっているところに降ろされた。 「上履きは無残だな。」 「・・・はい。」 先生は私の靴と靴下をすばやく脱がせた。 「迷惑かけてばかりで、ごめんなさい。」 「ここまでくると、もはや運命だな。」 先生の返答に胸がぎゅっとなる。運命か・・・ 水を私の足にかけて、墨を洗い流してくれている。 「大根みてぇ。」 先生はつぶやいた。 「そんなに太い?」 前へ |次へ |
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