《MUMEI》 「ご迷惑おかけしました。」 昨日と打って変わりツンは堂々と振る舞う。 ツンではなく完全にタカトオになった。 兄貴が帰ってくるまでツンは簡単に会話を交わす。 放蕩息子の帰還に我が家は何らかの衝撃を受けた。 ウチの長男なんて未だに熱に浮されてる。 「高遠君はそれじゃあ国雄と仲良くして下さってたのね……」 母さんは空白の時間を埋めたくて、兄貴のことを質問したがツン自体は最近知り合ったばかりだそうだ。 ツンと兄貴を見た時は年期の入ったカップルとばかり思っていたので正直の所驚いた。 しっかり受け答えもするし年下には思えない。 膝の上の拳が震えているのさえ除けばだが。 見ない振りをしておこう。 その虚勢が解けるのはただ一人、俺では無い。 小暮国雄も、高遠光もなんて影響力だ。 絶やすく俺達を巻き込んでく。 「芸能界の方だったなんてねぇ……。」 母さんはいつもより畏まる。 「いえいえ、名ばかりのタレントみたいなものですよ。」 この笑顔でファンの心を掴んだんだな……。ちょっと母さん嬉しそうだし。 「国雄は仕事で遅くなりますが宜しいですか?」 極力にこやかに微笑んでいる。 ツンは兄貴が今夜迎えに来るまで居るらしい。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |