《MUMEI》 「き、切符買わなくちゃ」 私は慌てて話題を変えた。 「ん? 買ってあるよ、はい」 和馬は三人分の切符を見せた。 「あの、お金…」 「い〜の、い〜の、蝶子ちゃんは。 あ、孝太は払えよ」 「言わなくても払う」 そして、私達は新幹線に乗った。 和馬から渡された切符の座席番号を確認する。 私は、窓側。 隣の和馬が通路側。 隣の隣の、通路を挟んだ、通路側に孝太が座った。 ちなみに新幹線は、進行方向に向かって、右側が二列・左側が三列だった。 「三列は空いて無くてさ」 和馬は笑いながら言ったが、それが嘘だということは、私も孝太もすぐにわかった。 お盆のこの時期。 東京へ向かう上りの新幹線には、空席が目立っていた。 「あんまに見ないでもらえますか?」 「ん? 景色見てるだけだよ」 和馬はそう言って、ずっと私の方を見ていた。 そして、うんざりするほど話しかけてきた。 いいと言うのに駅弁を私の分まで買って、手渡された。 「…ありがとうございます」 一応、お礼を言って、私は幕の内弁当を食べ始めた。 和馬も同じ物を食べていたのだが… 前へ |次へ |
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