|
《MUMEI》 「リョウイチくん、こっち入ったら?濡れそう」 「あ…はい。ありがとございます」 沈黙を破り声をかけると、彼はにこりと笑って立ち上がる。 ティーセットを乗せたお盆を手にリビングに案内し、先日と同じようにソファを勧めた。 「お茶、おかわりは?」 「…いいですか?いただいても」 「もちろん。ちょっと待ってて」 紅茶の用意をしつつ、子猫用のミルクも用意する。 「お待たせ。はい、アンタはこっちね」 ミルクの皿をソファの横に置くと、子猫はしなやかにリョウイチくんの膝から降りた。 少しずつミルクを舐める。 「リョウイチくんもどうぞ」 「ありがとうございます」 テレビのついていないリビングは、雨の音に満ちていた。 時折、子猫が鳴く声。 私もリョウイチくんも黙っているせいか、いつもよりはっきり聞こえる。 何でだろう、心が安らかになる。 気まずさのかけらもない。……少なくとも、私は。 前へ |
|
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |