《MUMEI》

千夏が渡したら、私と佐久間が繋がってることバレバレじゃない!


「とにかく千夏はそんなことしなくてもいいの!」


もう一度言ったが、


「私は大丈夫。久し振りに太一に会いたいし!」


と前向きに言い、それだけならまだしも、


「・・・・・それに、愛加は太一に会いにくいでしょ?」


なんて余計なひと言を。


「え?なんで愛加は太一君と会いにくいの?」


案の定、佐久間は不思議がる。


千夏の表情が一瞬にして固まり、


「やだっ、ごめん・・・私、知ってるのかと思って・・・」


状況を察したのか、焦って私に言い訳をする。


が、そんなのは焼け石に水。


佐久間はさらに追及する。


「知ってるって何を?」


千夏は余計なことを言ってはいけないと、沈黙を守る。


そして私は・・・


「大きなケンカをしたの。それだけよ」


不必要な嘘、いや、半分嘘をついた。


「ということで私が太一に渡しておくわ!仲直りついでにね」


そう言って、私は佐久間から太一へ渡す引越しの挨拶の品を受け取った。

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