《MUMEI》

「そろそろ俺たちは失礼しようか」


高橋さんの一言で千夏が荷物をまとめ、


「あ、じゃぁ俺も・・・」


越智さんも二人について帰ろうとする。


「佐久間さん、イタリア楽しんできてね☆」


千夏の言葉に、


「残念ながら仕事なの!!あ、でもお土産は楽しみにしてて」


佐久間はつまらなさそうな顔をわざとしながら返事をする。




そして三人が帰り、二人きりになった。



「出張ってイタリアに行くの?」


初耳でびっくりした。


「そ、イタリア。一週間だけお勉強に行ってきます」


「ふーん…お勉強かぁ…」


全然知らなかった・・・


「前から興味があったデザインの勉強にもなるし、どうかって言われてさ」


「デザインっ!?」


設計ついでに興味があるってことかしら…?


「実は…例のフランス料理の店…俺がデザインしたんだ…」


「そうなの!?」


佐久間は恥ずかしそうに頷く。


「親父のツテでね…でも食べに行ったのは、この間が初めて。いつもは様子を見に行くだけだから…」


それで年に数回ってこと。




「ま、イタリアで仕事と勉強を頑張ってきたら?」


「俺がいないと、さみしいだろ?」


佐久間がいつもの調子で聞いてくる。


「全然!」


「うそつき!本当はさみしいくせに」


佐久間は冗談ぽく言って、私を抱きしめた。


「俺はさみしいなぁ。早く帰ってきたい・・・」



私は・・・遊び相手がいなくて退屈かな…


でも、それよりもイタリア出張を教えてもらえなかったことが、なぜだか寂しかった。


ま、いいけど・・・


どうせ佐久間さんの予定なんて興味ないしっ!!


「じゃ、私も帰るわ」

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