《MUMEI》 「何すんだよ、孝太」 (ん?) 私が恐る恐る目を開くと、孝太が和馬の襟を掴んでいた。 「いい加減にしろ、和馬」 「何だよ。蝶子ちゃんだって嫌がってなかっただろ、なぁ?」 「それは…」 「いいから、次だぞ」 孝太の声の後に、車内に『次は、終点、東京』と言う声と、乗り換え案内のアナウンスが流れた。 「別に、終点だから、ゆっくり降りればいいじゃん」 「乗り換えまであまり時間が無いんです」 「そうなの?」 私が頷くと、和馬は渋々棚から荷物を降ろし始めた。 ドアの前に、孝太・私・和馬の順番で立つ。 「孝太も、時間無いのか?」 「あぁ」 新幹線のスピードが徐々に落ちて行き、ホームに入った。 「じゃあ、ここでお別れだな」 和馬が私の両肩に手を置いた。 (ちょ…) そのまま、抱きしめられたら、…困る。 ドアが開いた瞬間。 「走れ!」 孝太が私の腕を勢いよく掴んで走り出した。 腕は痛いが、おかげで和馬に捕まらずに済んだ。 「え? 何?これ?!」 置き去りにされた和馬は混乱していた。 その時。 「和兄(かずにい)!」 「琴子?!」 前へ |次へ |
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