《MUMEI》
―だって!
「待てよ!折原っ!」




折原は立ち止まった。





「何?私ランニングしてんだから邪魔しないでよ」




「は?」



「じゃ…」




折原はまた走りだした。




俺も後ろからついて行く。





「はあ、はあ。なんで…なんでついて来んの!」





「俺もランニング日課だから!つか折原のフォームカッケ〜!もしかして陸上部?」




「ハァ、ハァ、将棋!将棋部!」




折原は突然立ち止まると、フェンスに掴まってハアハアと苦しそうに呼吸をしだした。



「マジか!ハァ、ハァ、俺、将棋なら…ハァ、打てる!良かった!」




「何がイイの…ハァ…」



「だから、俺、折原の事…、好きだから」



「―――へ?」





苦しそうな表情で俺を見てくる。



「だから…、おり…、真菜ちゃん!俺と…



俺と付き合って下さい!」




俺は手を折原に向け頭をぺこり。





――ドキドキする。





きっとダメだろうけどもう片想いって耐えらんねーし…もしかしたらって淡い希望もあったりして。





――それと…この子を他の誰かに渡したくない独占欲





「―――お兄ちゃんは?」



「あれは…ゴメン、思わずごまかして言っちゃったっつうか…」



「――私、思わずの台詞でめちゃめちゃ悩んだ」



「――――悩んだ?」




顔を上げると白い顔を真っ赤に染めた折原と視線がぶつかり、折原はふと横顔に視線を外した。




「悩んでくれたの?」


「――――。」



「――俺、頑張って太るから、真菜ちゃんが綺麗に…、いや元々綺麗だけど、俺も変わるから…、何処まで竹山さんになれるかわかんな……」




――更に真っ赤な顔で俺を確り見つめながら真菜ちゃんは――



俺の手をギュッと握ってきた。



「内藤はこのままで良いよ」


「真菜ちゃん…」




俺は少しだけ真菜ちゃんを見上げなければならない。


――もう少し身長が欲しい。



――だって…




自然にキスできるだろうか?


―――それでも俺は真菜ちゃんの腰を引き寄せ




唇をそっと合わせた。



手は繋がれたまま、唇は触れているだけ。





唇を離すと真菜ちゃんはうつ向いてしまった。




「紛らわしいことしてゴメン、先に坂井さんに許可とって告った方が良いかと思って」


「―――うん」


「俺の彼女になってくれる?」

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