《MUMEI》
和馬の過去
「…訊いてもいい?」


「何だ?」


「あの…、和馬と琴子さんが、…喧嘩した理由は何?」


孝太はすぐには答えなかった。


(…やっぱり言いたくないよね)


和馬は孝太にとって幼なじみで、友人で、琴子さんは大切な妹だ。


無関係の私が、訊いていい話ではないのだ。


「ごめんなさい。変な事…」


「三年前」


「え?」


「ホストクラブに勤めてた和馬は、『アゲハ』に勝ちたかった」


『アゲハ』は俊彦の事だ。

「勝って、誰よりもいい男になったら、琴子に告白しようと思ってるって言った。

『そんな事しなくても、琴子はお前が好きに決まってる』って言っても、和馬は信用しなかった。

琴子は俺に似て、感情がわかりづらいし、口数が少ない。

『好きだ』とうまく伝えられない、不器用な妹なんだ」


(そうなんだ…)


「てっきり、私みたいに顔に出やすい子かと思ってた」


だから、和馬が私に関心を持ったと、そう思った。


「正反対の女と付き合う事で、和馬は琴子を諦めようとしたんだ。

…結局、どれも長続きしなかったが。

話が逸れた。

元に戻すぞ」


孝太の言葉に私は頷いた。

「和馬は必死だった」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫