《MUMEI》
伝えたい想い。
『…私はずっと会いたかったよ。』




やっと言えた言葉…




ずっと言いたくて言えなかった言葉…




『…俺も会いたかった。』



いつもクールなヨウスケが甘えたように私に抱きついてる…。




今にも泣きそうな声で…。



『手術したばっかなんだから泣いちゃダメだよ。』




私の意地悪な言い方に、



『…泣かねぇよ。包帯濡れるし…。』




と、即答するヨウスケ。




『フフッ。また強がる。』



…昔に戻ったみたいで楽しかった。
あの頃を遠い昔のように感じていたのに…。




『…瑠伊。』




ヨウスケは呼び掛けた後、私の顔に手を伸ばし、指で唇を触り、距離を確かめながらキスをした…。




『…ぎこちないね。』




と、私が笑うと、




『…うるせぇ。目が見えねぇからうまく出来ないんだよ。』




と、ヨウスケは、かなり恥ずかしがっていた…。




『…でも、今は良かったと思ってる…。包帯が無くて瑠伊の顔が見えてたら、こんなに素直になれてなかった…。』




『…うん。』




ヨウスケの言葉が胸に刺さった…。




ヨウスケの不安をなくしてあげたい…。




『いつ退院出来るの?』




『…んー分からない。リハビリもあるだろうから、長引きそうだけど…。』




『…そっか。』




やっと、分かりあえたのにまた離れ離れなんだ…。




ヨウスケのそばで看病したいけど…東京じゃ無理だし…。




私は勇気出して言ってみた。




『…地元に戻ってきたら?あっちでもリハビリ出来る病院を探してみようよ。』



…ヨウスケの答えは意外にもあっさりしていた。




『…そうだな。担当医と相談してみるわ。』




『うん。』




…こうして、ヨウスケは一週間の入院の後、地元の病院に転院してきた…。




まだ、包帯は取れてなかったけど、経過は良好とのことだった…。




地元に帰ってきたヨウスケはみんなに歓迎されて、少し照れくさそう…。




そしていよいよ…包帯を取る日が明日に迫ってきた。

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