《MUMEI》 「俊彦から、誘いがあった?」 孝太は頷いた。 「その時、俊彦が『アゲハ』だって初めて知って、和馬も絶対近くにいると思った。 だから、迷わず『シューズクラブ』に就職した。 そこで和馬から、事情を聞いた。 琴子にも、話した。 なのに、和馬は琴子が今でも好きなのに 琴子も和馬が好きなのに …やっと肩の荷がおりた」 一気に喋った孝太は、深呼吸をした。 「じゃあ、…二人とも、『シューズクラブ』は」 目的を達成したなら、田舎にいる必要は無い気がした。 和馬に至っては、遠距離恋愛になるし。 「辞めない」 孝太は笑った。 「蝶子がいるし」 「…え?」 「面白いから」 (絶対、こっちが本音だ) 孝太は今まで見たことも無いような、満面の笑みを浮かべていた。 前へ |次へ |
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