《MUMEI》 墓参り「本当に、一緒に行くの?」 私の言葉に孝太は無言で頷いた。 「実家に帰らなくて、いいの?」 「後で帰る」 「でも…」 「今更だ」 孝太の言う通り、孝太と私は既に私鉄に乗っていた。 「それに…」 「それに?」 「琴子が幸せだとわかってても 和馬と一緒にいるとこ見ると … ムカつく」 私は孝太の言葉に思わず吹き出した。 「何だ?」 「いや、いい『お兄ちゃん』なんだなと… あ、降りなきゃ!」 私は慌てて電車から降りた。 孝太も続いて降りる。 ここは、東京と言っても、『都会』というより『下町』と呼ばれる地区だった。 ここから、母のお墓がある寺までは、タクシーで移動する。 その前に私は、駅前でお盆用の花束と、線香とライターを買った。 「…で、本当に付いてくるの?」 「悪いか?」 (悪くは無いけれど…) 墓参り自体は別に問題は無い。 「一つ、約束して」 私は首を傾げる孝太に提案した。 「母さんの前で喧嘩はしないで」 「誰とだ?」 「いいから、…お願い」 「わかった」 孝太が頷いたのを確認して、私達はタクシーに乗った 前へ |次へ |
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