《MUMEI》

「太郎さんは、元気かね?蝶子」


「はい、おじいちゃん。ちょっと前にインフルエンザにかかったみたいだけど、今は平気みたいです」


杖をつきながら、近付いてきたのは、母の父ー祖父の一夫(かずお)。


「新しい奥様も、弟さんも、元気?」


「はい、おばあちゃん。友君も父さんと同じ時期にインフルエンザにかかったみたいだけど、華江さんの看病ですぐによくなったみたいです」


祖父の隣に寄り添うのは、母の母ー祖母のハナだった。


「もう蝶子は墓参り済ませたんでしょう?

私達も早く行かないと」


急かすように言う女性に私は頷き、頭を下げた。


彼女は母の妹の三枝(みえ)おばさん。


既に結婚して、嫁に行ったのだが、毎年お盆には帰省していた。


夫も子供も一緒に来ていると祖母が教えてくれたが、墓参りには来たことがなく、私は顔を合わせる事は無かった。


「じゃあ、これで…」


「待って!」


光二おじさんが私の肩を掴んだ。


「あの?」


「その男、誰?」


光二おじさんは孝太を指差した。


「兄さん、蝶子にだって彼氏くらいいるわよ、ねぇ?」


「あ、いえ…」


「そうなのか?!」

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