《MUMEI》

(そ、…そっか)


多分、孝太は光二おじさんを諦めさせる為に今だけ『恋人のフリ』をするつもりなのだろう。


「何だ、やっぱり彼氏なんじゃない」


三枝さんが嬉しそうに言った。


「…ちなみに、大学は?」

「一応東大出ましたけど。ストレートで」


祖父はそれだけで、孝太を認めた。


私は、父が言っていた、

『お義父さんは学校の先生だったから、学歴重視でさ〜、お父さん、高卒だったから認めてもらえるまで、苦労したよ』

という言葉を思い出した。

「今は、何をやってらっしゃるの?」


「蝶子と同じ商店街で、会員制の靴屋の店員を。…月に、このくらいは、もらってます」


孝太は指を立てた。


「まぁまぁ」


(そういえば、確か…)


『お義母さんは、肩書きより経済力重視なんだ』


と、父は言っていた。


だから、祖母は父と母の結婚をすぐに認めたと。


(…て、この流れだと、孝太と結婚するみたいじゃない!)


私は慌てた。


否定したかったが…


「蝶子ちゃん、本当に、そいつ、彼氏?
…嘘ついてない?」


ここで否定すると、光二おじさんが諦めてくれなくなる。


(ど、どうしよう)

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