《MUMEI》

「蝶子は照れ屋だから、人前で抱きつかれて、びっくりしちゃったんだよな?」

びっくりしたのは本当だから、私は頷いた。


孝太は私から離れ、光二おじさんの元へ向かった。


そして、光二おじさんの耳元で何かを囁く。


みるみるうちに光二おじさんの顔が赤くなっていく。

?


数分後。


「も、もういい、わかった!」


光二おじさんが悲鳴を上げた。


「じゃあ、失礼します」


孝太は余裕の笑みを浮かべて私の荷物を持った。


私は慌てて水桶を倉庫に戻し、山田家の人々に挨拶を済ませて孝太を追った。


「ねぇ、何を言ったの?」

「ん? 聞きたいか?お前も」


何だか孝太は楽しそうだ。

「…内容による」


「朗読しただけだ」


(朗読?)


「何を?」


孝太は耳元で囁いた。


「官能小説の濡れ場を。
主人公俺・相手役蝶子で。
…話そうか?」


「い、いい!」


私は官能小説を読んだ事は無かったが、すごい内容の物だという認識はあった。

「そのうち、実践してみるか?

身内に認められた事だし」

「そんなの…しない!」


私は真っ赤になって訴えた。


「いい反応」


孝太はニヤリと笑った

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