《MUMEI》
文化祭1日目
「やっば―…」

「超カッコイイ……」

「惚れる……」

髪型はワックスでいじくられ、もちろんメガネは取られた。

川村さんのお兄さんの浴衣はオレの身体にぴったりで、茶色の涼しそうな生地はとても素敵だ。

「谷口!やっぱ春日くんにそっくりじゃん」

「そんなに…似てるかな?」

「双子みたいよ」

とてもびっくりしたし、図星をズバッと突かれて心臓がバクバクした。

「ははは……。う、嬉しいな…」

苦しい返事だ。しかしこれが精一杯。

2年3組は行列ができる程の人気だった。

正しい浴衣の着方を知ってる人はいなくて、オレの浴衣はだんだん着崩れしていく。

――ピリリリリリッ

有理だ。

「もしもし、有理?」

『着いたけど?』

「今どこだよ」

『正門』

「教室どこかわかるだろ?階段下まで来れるよな」

『階段下?…わかった』

電話を切った後、そこらへんにいたクラスの男子を捕まえてトイレに行き、崩れた浴衣を直してもらった。

お礼を言って、そのまま階段を駆け下りる。

「有理!野中さん!こっちです」

有理をオレが抱え、野中さんが車椅子をたたんで運ぶ。

有理はオレの耳元で、『浴衣いいじゃん』と言ってくれた。

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