《MUMEI》
入口
 校舎の裏には学校を囲んでいるブロック塀があり、その周辺に雑草や瓦礫が散乱していた。
見回しても地下への入口らしき扉は当たらない。
しかし、レッカは迷うことなく塀の角まで行くと、そこの地面を掘り始めた。

「……なに、してるの?」

羽田が不思議そうにその様子を眺めていると、すぐに土の下から鉄の板が現れた。
よく見ると、その板の端に取っ手がある。

「これが入口だ」

レッカは言いながら取っ手に手をかけ、力いっぱい引っ張った。
かなり重たいらしく、レッカの腕がプルプル震えている。
手伝おうか、と声をかけようとした時、ガコンと音をたてて扉が開いた。

「よっと……」

レッカは扉を塀に立て掛けるとホッと息を吐いた。

「これ、開けるの結構コツがいるんだよ」

「重そうだもんね」

羽田が言うとレッカは深く頷いた。

「すっげえ重い。よし、それじゃあ、凜から先降りて」

「うん」

凜は頷きながら、地面に開いた四角い穴を覗き込んだ。
つられて羽田も覗いてみる。
そこには下へと続く鉄製の梯子があった。
底にぼんやりと明かりが見える。

「なにしてんだよ。早く行けって」

レッカに急かされ、凜はゆっくりと梯子に足をかけた。
続けて羽田も慎重に梯子を降り始める。
最後にレッカが穴に身を入れると、器用に扉を閉めた。

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