《MUMEI》
分からない
   〜栄実視点〜


2回目のインターホンが鳴らされた後、静寂を守る私の家の玄関で――私はドアに背中をつけ座り込んでいた。


私は海が来るであろう時間に玄関に降りて行った。


顔を合わせる勇気なんかないのに・・・。


でも部屋でじっとしてるなんてできなくて。


玄関に行き、数分すると一回目のインターホンが鳴らされた。


いつもの癖でドアノブに手をかける。


"栄実・・・!"

その瞬間に海が笑顔で私の名前を呼ぶ姿が頭に思い浮かぶ。


「か・・・い・・・・・。」


そっと呟いた声は2回目に鳴らされたチャイムにかき消された。


今の私は、海を傷つけることしかできない。

海の笑顔を曇らすことしかできない・・・。


すぅ―――っと冷たいものが頬を伝わって玄関の床に落ちた。


海に会えない・・・。


私はドアノブから手を離しドアに背を向けズルズルと力無くその場に座り込んだ。


海・・・・・ごめんね。


弱くてごめん。

もう分からない。

何が今一番大切にしなきゃいけないものなのか。

今、私はどうすればいいのか。

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