《MUMEI》 佐久間と千夏には、自分から太一に渡すと言ったが、実は渡す気なんて最初から全くなかった。 千夏が渡せば、自分と佐久間との繋がりがバレてしまうし・・・ かと言って、佐久間が渡すとなると、何を言われるか分かったもんじゃない。 だから自分で渡すと言っておいて挨拶品を預かり、太一には渡さないでおこうと思っていた。 なのに・・・ 「で、その挨拶品は・・・」 佐久間が私に言付けたと書いたので、太一はこの場で私から受け取ると思っている・・・。 「あ・・・」 渡すつもりがなかったから家にあるんだよね・・・どうしよ・・・ 「今日は、それを俺に渡すために来たんだろ?」 あぁ・・・太一は私が佐久間の部屋に挨拶品を取りに来たと思ってるんだ・・・ 「えっと・・・違うのよ。今日は・・・書類を佐久間さんの部屋に忘れちゃって・・・それで・・・」 こんなこと言ったら、なんで書類が佐久間の部屋にあるんだって思われるじゃない!? 私が何を言っていいか困ってると、、 「それで何?」 太一が少し苛々しながら言葉を催促する。 「とにかく今日は持ってないのよ・・・」 今の私に言えるのはこれだけだわ。 「そっか・・・」 私、どうしよう・・・ 後日、渡すわ!とか言うべき? 私が一人で悶々としているのを横目に太一は喋る。 「ま、仕方ないよな。俺も昨日の晩は留守だったし・・・」 私は太一が昨晩不在だったことが、昨日からずっと気になっていた。 だからか無意識に聞いてしまった。 「津田沼???」 前へ |次へ |
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