《MUMEI》 予定変更「からかわないでよ」 「タクシー来てるぞ」 孝太は涼しげな顔で、行きと同じタクシーに乗り込んだ。 寺に着いた時に、帰りも迎えに来てほしいと頼んでおいたのだ。 「この後の予定は?」 タクシーで駅前に戻ると、孝太が質問してきた。 「父さんの所に行くけど、孝太さんは実家に戻るんでしょう?」 私の行き先と、孝太の住む地区は逆方向だから、私は孝太とはここで別れるつもりだった。 「和馬と琴子が蝶子に話があるとメールが来た。 時間作れるか?」 和馬と琴子さんの事は、私も気になっていた。 「…電話してみる」 私は父の家に電話をした。 といっても、出るのは華江さんだと思っていた。 「もしも…」 《無事か?! 蝶子! 光二君にまた何か言われ無かったか?!》 電話に出た父が、あまりに大声だったので、私は携帯を耳から離した。 そして、父の声は孝太にも聞こえたらしい。 孝太が私の携帯を取り上げた。 「大丈夫ですよ、僕もいましたから」 (ぼ、『僕』?) 《お前は誰だ!》 叫ぶ父に、孝太は丁寧に自己紹介を始めた。 数分後。 《いや〜なかなか好青年だな》 前へ |次へ |
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