《MUMEI》
怖さ
「今日見学なんだ?」
「な、なに?」
突然長沢に話かけられた。
――今日の体育は俺の大好きな水泳なんだけど…
「やっぱ俺がつけたキスマークのせい?」
「分かってんなら聞くなよ!つか長沢は?
早く着替えないと遅れるぞ?」
「ふ〜ん、そんなに俺の裸見たいんだ?」
「なっ!」
なんだコイツ!
自信たっぷりの表情しやがって!
つ、つか俺コイツに無理矢理酷い事されてんだし!
「――俺に二度と近寄るな、あんな事…
もう…悔しいけど忘れてやっから、もう…」
あんな、常識からしてありえない行為…
「―――それは困る」
「―――は」
思わず見上げると長沢の真剣な表情とぶつかり…
すると更衣室からガヤガヤとプールサイドに何人かかたまってやって来だした。
場所変えようって言われて素直に応じてしまった。
いや、だって人前で出来る話じゃないじゃんか。
人気のない屋上に連れて来た途端、壁に押し付けられ―――あろうことか当たり前の様に唇を塞がれた。
どんなにもがいても悲しい位の体格さでビクともしない。
――それに……。
知ってしまった甘い疼きが躰の奥から沸き上がりだし、無意識の内に俺は長沢の背中に腕を回し必死にしがみついていた。
「佐伯やっぱカワイイ」
「〜〜〜〜!!」
長沢は俺の耳を哈みながら背中を撫でてきた。
――背中は…なんかヤバい…――
「アッ……ンッ」
思わず変な声が出てしまい恥ずかしさと怖さで涙が溢れてきた。
「――フフッ、佐伯〜もう俺無しじゃいらんない躰になってんじゃん、忘れるなんて無理だよ?――ほら、こうすると――」
「―――――ぁあっ」
小さな乳首をキュッと摘まれただけで力がカクンと抜けた。
―――そのままそっとコンクリートの床に寝かされて―――。
結局、また躰を繋がれてしまった。
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