《MUMEI》

「こ、琴子さん?」


後ろからいきなり話しかけられ、驚く私に琴子さんが無言で頷いた。


琴子さんは買い物帰りらしく、ビニール袋を持っていた。


「おかえり、琴子。これ持つね」


満面の笑みで和馬が言うと、琴子さんは頷いて、和馬に袋を手渡した。


「琴ちゃん、幸せそうだね!」


「そうね、あなた!」


(え? そうなの?)


孝太の両親はわかったようだが、私はよくわからなかった。


「勘が良すぎる両親も困りものだ。…おかげでこっちは感情をあまり出さなくても人はわかるものだと思っていたからな」


「そうなんだ…」


?


私と孝太を見つめる孝太の両親の目が輝いていた。


「あ、あなた!孝ちゃんがあんなに喋るように…」


「今日は本当にいい日だな〜、うん!」


嬉しそうな両親を見て、孝太は呆れながら言った。


「あと、親が賑やかすぎると、子供は喋らなくなる」

ーと。


(あ、それ、何となくわかる)


私も父の前では口数が少なかった。


「とりあえず、荷物置くか。行くぞ」


そう言って孝太は、私を連れて二階へ行った。


「そっちが琴子の部屋」


「…入っていいの?」

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