《MUMEI》

蓬田ママは、驚いて目を見開いた。



「…かなめ、どうしたの??
―…まさか、椎名くんに…??」



おれは、黙って頷く。
―…この場合の『椎名くん』は、蓬田だけど。



すると。



「…ダメよ!!また怪我するでしょう??……それに、前に作ってくれた時は、
食べた子みんな、お腹こわしちゃったし…」



…そこまで脅威的な料理だったのか…!!



「…お弁当なら、ママが作ってあげるから!ね??」



…でも。


おれは、蓬田ママの目を見据える。



「…でも、やらなきゃ出来る訳無い。『出来ない』んじゃなくて、『やらない』んだ。
失敗したって、何もしないのより断然良い。…大事なのは、『やろう』っていう気持ちだろう??」



蓬田ママが、見開いた目を更に大きくする。



「―…と、思います」



慌てて、付け加える。



…親父がいつも言ってたこと。



『…何でもさ、やる前から諦めたら、可能性は0%になるんだ』

『やってみれば、案外何とかなるもんだぞ』



昨日の蓬田の話を聞いて、思った。


蓬田は、『できない』んじゃなくて、
『やらない』―…正確には、『やらせてもらえない』だけなんじゃないか、って。



「…そうね、ママがそうさせてたんだわ。…ごめんね…。
―…お弁当、作ってみなさい」



蓬田ママは、優しく微笑んだ。



「はい!」



『やってみろ。自分を信じて、前へ進め』



―…そうだろ??…親父。

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