《MUMEI》 私の言葉に一瞬だけ太一は驚いた顔をしたが、すぐに元通りになった。 「美幸から聞いたの?」 私の質問に対して質問で返してくることが、昨晩は津田沼にいたことを肯定しているように思えた。 「駅で会ったって…」 暗に女と一緒にいたことも知ってると匂わせた。 「あぁ…、あの時は凄い偶然でビックリしたよ」 しかし太一は一緒にいた女については触れない。 それが余計に、その女が新しい彼女だと示唆している気がした。 「美幸も同じようなこと言ってた……―――――」 私のその言葉を最後に、会話が途切れた。 「それじゃ……俺、部屋に戻るわ。佐久間さんによろしく伝えといて!」 「あ………うん、じゃぁ」 津田沼の件は気持ちを沈ませたが、それでも本当は太一ともう少し話していたかった… そしてエレベーターに向かって歩く太一に思い切って声をかけた。 「太一!」 前へ |次へ |
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