《MUMEI》 ◇◆◇ 「ああ、なるほど。あんたが花姫かぁ」 黒蝶は親しげに咲弥に話し掛ける。 するとすかさず、草薙がそれを咎めた。 「黒蝶。姫君に無礼だ」 「堅苦しいよりはましだろ?」 「─────‥‥」 黒蝶の言葉に呆れ、草薙は溜め息をつく。 その傍らで、咲弥は不思議そうに黒蝶を見つめていた。 (黒蝶=d‥‥?) 束ね、高い位置から垂らした長い黒髪。 纏う衣は黒く、左の袖が剥ぎ取られていた。 二の腕には、何故か無造作に白い布が巻かれている。 黒蝶がそれを解くと、咲弥は目を見開いた。 「‥‥!」 蝶の刺青。 「貴女が──‥」 「まぁそういう事。宜しくな」 咲弥に笑いかけ、黒蝶は再び刺青を隠すように白い布を巻き付けた。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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