《MUMEI》

名前を呼ばれた太一は、ゆっくりと振り返る。




「あ……、あの………」


私は……呼んだはいいけど言葉に困った。



「何?」




私たちの間に微妙な空気が流れ始めるのを感じて、口が焦って勝手に動きだす。



「挨拶品なんだけど……、佐久間さん来週には帰国するから、佐久間さんからもらってくれない……?」


「…………わかった!」



そう言って太一は自分の部屋に戻って行った。




ハァ――…。


思わずため息が漏れた。

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