《MUMEI》 ◇◆◇ 「あの、そちらの方は?」 「ああ、こいつは草薙。一応相棒な」 「一応とは何だ」 「怒るなって。──ああ、そうだ。あんたの名前、まだ聞いてなかったよな?」 「咲弥です」 「咲弥かぁ」 「黒蝶。言葉を慎め」 「名前で呼んだっていいだろ?」 「‥‥‥‥‥‥」 草薙はそれっきり黙り込んでしまった。 そして暫くの間、三人は碁盤目状の道を漫ろ歩いていた。 「桜が綺麗──‥」 「今は丁度花盛りだからな。咲弥はここに来るのは初めてなのか?」 「はい」 「なら──あたしらが案内してやるよ。な、草薙?」 「未の刻までには邸に戻ると誓うか」 「当たり前だろ?」 「‥‥ならいいだろう」 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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