貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
看病
大学を出て、バイトを終えてからアパートに戻ってきたのは夕方だった。

自分の部屋には入らずにそのまま由自の部屋に向かう。カギを開けて中に入る。


「由自―?」

返事がない。

布団の上にもいない。

どこかに出かけたのか?――いや、由自の部屋のカギはオレが持っている。

「由自?」

台所や風呂場を覗く。
トイレを開けようとすると、カギがかかっていた。

「由自?寝てるのか?」

「――…俊……気持ち悪い……」

「吐いたのか!?ここ開けろ」

しばらくすると、ドアがそっと開いた。

由自が便器の前にうずくまり、じっとしていた。

中を覗く。

「今日食べたもの全部出してるじゃん……。もっとでるか?」

「ううん…もう無理」

「じゃあうがいするだろ?」


由自は今まで見たことない程、弱っていた。
確かに滅多に病気にかからない方だったから、一度病気をするととても長引いた。


「由自、大丈夫?」

息が荒いし汗もすごい。

「着替えるか?」

「着替えさせて…くれるんだ?」

「他にどうしたらいいかわからないんだ」

「俊、頼むよ」

オレは台所に行き、お湯を沸かす。
タオルを濡らしておしぼりを作った。

……さあ、やるか。

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