《MUMEI》

◇◆◇

 幾つもの角を曲がり、邸の前に着く頃には、もう既に日が沈みかけていた。

 咲弥は邸を見上げ、目を丸くした。

「立派なお邸‥‥」

「まぁ、内裏に比べりゃ小さいもんだけどな」

「黒蝶」

「ん?」

「姫君をお連れするぞ」

「なぁ、何むくれてんだ?」

「‥‥気に食わんからだ」

「?」

「‥そのような態度が気に食わんと言うんだ。大体お前は‥」

「はいはい、説教はもう十分」

「‥‥‥‥‥‥‥」

 草薙の言葉は、呆気なく遮られてしまった。

◇◆◇

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