《MUMEI》

◇◆◇

 部屋に案内する、と言われ、咲弥は再び歩き出す。

 中へ入ると、文机の上に手折られた桜の枝が置かれてある事に気が付いた。

(?‥どうしてこんな所に──‥)

 咲弥がきょとんとしていると、黒蝶が説明してやる。

「ああ、それな。あいつの気配りみたいなもんだ」

 すると咲弥は枝を手に取りしげしげと眺める。

 枝先に咲いたその花からは、仄かに甘い香りが広がった。

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