《MUMEI》

「ああ、それと──普通に話していいからな」

「ぇ‥‥?」

「姫が付き人に畏まる事ないだろ?」

「あ、はい‥」

「はい≠ヘ無しだ」

「‥‥うん‥」

 戸惑いつつも答え、咲弥は扇を見つめた。

「広げてもいい‥?」

「ああ。気に入るといいけど──」

 それは桜の花びらを散らした柄だった。

「綺麗──‥」

 咲弥が嬉しそうにするのを見て、黒蝶は満足げに笑った。

◇◆◇

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