《MUMEI》 「僕は…本省の主任に昇進できるかどうかの瀬戸際だったんだ…。 明けても暮れても頭の中は、その事で一杯だった。 たぶん――…自分でも気付かないうちに、仕事のストレスを妻に向けてしまったのかもしれない…。」 僕は彼の話が終わるのを待ってキューを打つ…。 カッ…カンッ!……コトン… ―――6番が沈む………。 バックスピンのかかった手玉は、テーブルの反対側に滑っていった。 「そんなこと無いだろ――……。 中島だって精一杯、家族を養うために頑張ってきたんだから…。 カオリちゃんだって、十分そのことは分かってるはずだろ?」 僕は喋りながら、次のショットに備えてテーブルの反対側へ回った。 前へ |次へ |
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