《MUMEI》
琴子の部屋
驚く私に、孝太は無言で頷いた。


(それじゃ、お邪魔します)

私はそっとドアを開けた。

琴子さんの部屋は、シンプルだった。


必要最低限の物しか置いていない。


壁にも、数字だけが書かれたカレンダーが一枚かかっているだけだった。


ただ、一枚。


学ランの和馬と私服の琴子さんの二人で写った写真だけが、パステルピンクの写真立てに飾られていた。


(…着替えていいのかな?)

荷物を置いた私は迷っていた。


(孝太に聞いてみよう)


私は、ドアを開けた。


「わっ!」


「…」


目の前に、琴子さんが立っていた。


「あの、ごめんなさい。勝手に入っちゃって」


琴子さんは無言で首を横に振った。


「…中で着替えても、いいですか?」


恐る恐る訊くと、琴子さんは頷いた。


(良かった)


「じゃあ、着替えますね」

私がドアを閉めようとすると、琴子さんが部屋の中に入ってきた。


(えぇ?)


琴子さんは、部屋のカーテンを閉めると、『どうぞ』と言って、椅子に座った。

琴子さんは机から何かを取り出し、熱心に見つめているようだった。


(まぁ、女同士だし、別にいいか)


私は着替え始めた

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