《MUMEI》
―――俺の中に同情の念があったことも、罪悪感があった事も――
――直哉には分かってる――
――分かられてた―――……
親友に戻ろうと、俺は直哉の親友なのだと一人よがりに決めて…、
初めから直哉、俺の事愛でる対象としてしか見ていなかった。
直哉は一度たりとも俺を親友にはしなかった。
――しゃがみ込み愛しそうに、枯れそうなコスモスに触れる直哉。
もうその手は俺に向く事はない。
『―――お前から俺を突き放したんじゃないのか?』
―――そう、言っている直哉の声が…聞こえた気がした。
「な、なお…や…
俺………好きだった…――ずっと言わなかったけど……、直哉の事、直哉が―――ずっと」
▽
――おばさんが来ても直哉はコスモスに夢中になっていた。
もう、俺がここにいるかぎり振り返る事は無いと言いたげに。
「大学ね、来年から復学させようと思うの」
「―――そう…ですか」
「直哉、大学でお友達たくさんいたみたいでね、時々大人数で遊びに来てくれるのよ、
そうするとね〜、声出して笑うのよ?どんなに頑張ってサポートする家族より友達の何気ない力が一番のリハビリだなって。
だから、例え卒業につながらなくてもお友達のたくさんいる環境にね?戻してあげようと思うの」
「―――――――」
――直哉は…
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――――。
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