《MUMEI》

―――俺の中に同情の念があったことも、罪悪感があった事も――




――直哉には分かってる――



――分かられてた―――……





親友に戻ろうと、俺は直哉の親友なのだと一人よがりに決めて…、



初めから直哉、俺の事愛でる対象としてしか見ていなかった。




直哉は一度たりとも俺を親友にはしなかった。




――しゃがみ込み愛しそうに、枯れそうなコスモスに触れる直哉。


もうその手は俺に向く事はない。



『―――お前から俺を突き放したんじゃないのか?』




―――そう、言っている直哉の声が…聞こえた気がした。



「な、なお…や…
俺………好きだった…――ずっと言わなかったけど……、直哉の事、直哉が―――ずっと」





――おばさんが来ても直哉はコスモスに夢中になっていた。



もう、俺がここにいるかぎり振り返る事は無いと言いたげに。




「大学ね、来年から復学させようと思うの」



「―――そう…ですか」



「直哉、大学でお友達たくさんいたみたいでね、時々大人数で遊びに来てくれるのよ、
そうするとね〜、声出して笑うのよ?どんなに頑張ってサポートする家族より友達の何気ない力が一番のリハビリだなって。
だから、例え卒業につながらなくてもお友達のたくさんいる環境にね?戻してあげようと思うの」



「―――――――」




――直哉は…


――――――――
――――。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫