《MUMEI》 タラモサラダを仕上げた琴子さんに、私は話しかけた。 ちなみに… 他の料理は、材料と調味料を計っただけで、まだ切ってもいなかった。 (このままじゃ、間に合わないよな…) 私はチラッと時計を見た。 それから、琴子さんに提案してみた。 「私が孝太さんの好きな物、作ってもいいですか?」 と。 単に、たまたま孝太の好きな物が、早く出来ても問題無い料理だっただけなのだが… 一応、ただ作ってもいいかと訊くより、こう言った方が琴子さんを傷付けないような気がした。 (良かった) 琴子さんが、頷いたので、私は調理を開始した。 私が他の料理を仕上げ、すまし汁以外の盛り付けを終え、洗い物を終えた頃、琴子さんは親子丼を完成させた。 テーブルは孝太が拭いておいてくれたので、和馬と琴子さんが配膳する間に、私はすまし汁を盛り付けた。 「お待たせしました」 私はすまし汁を配り、席についた。 四人がけのテーブルに、いつも和馬が使っているという折りたたみの椅子と、上の棚の物を取る時に使う丸椅子を足しているので、少し狭いが、賑やかで暖かい食卓だった。 「…ありがとう、蝶子さん」 前へ |次へ |
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