《MUMEI》

「蝶子でいいですよ、同い年だし」


私が微笑むと、琴子さんが

「じゃあ、『さん』と敬語やめて」


と言ってきた。


「うん」


すると、琴子が、ものすごく嬉しそうに、母親の孝子さんが太陽だとすると、優しい月の光のような笑顔を見せた。


「俺、これ見るまで苦労したのに…」


和馬が悔しそうに言った。

「…久しぶりに見た」


孝太が驚いていた。


「蝶子ちゃん!」


「は、はい?!」


孝子さんが私の両手を掴んだ。


「もう、このまま、うちの子に、お嫁に来ない?

孝ちゃんとも琴ちゃんともこんなにすぐ仲良くなれた女の子は初めてなの!

お料理も美味しいし、ね、あなた!」


「そうだな、そうしなさい」


裕太さんが頷いた。


「あ、あの、そう言われても…」


「何? もしかして、彼氏がいるの?」


「いえ…」


「じゃあ…」


「母さん、やめろ」


目を輝かせる孝子さんを、孝太が止めた。


「何よ、孝ちゃんだって、蝶子ちゃん好きなんでしょ?」


「いろいろあるんだ」


「あのね、孝子さん。強力なライバルがいるんですよ」


和馬が説明した。


「三角関係なのね!」

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