《MUMEI》 最後の曲ミライはふわりと笑みを浮かべると、ミユウに両手を伸ばした。 自然とミユウも彼女へ両手を差し出す。 そして無くした宝物を取り戻したかのように、優しく、きつく抱きしめた。 すでに外は薄暗い。 ミユウはゆっくりミライの身体を離すと、持っていた鞄から食糧を取り出した。 それはここへ来る途中、通り掛かったスーパーから貰ってきた物だ。 「これ、食べて。あそこから出てきてから何も食べてないでしょ」 ミライは何か問うようにミユウの顔を見つめる。 「うん。わたしも食べるよ」 ミユウの答えにミライは頷いた。 そしてパンの袋に手を伸ばす。 「今日はここに泊まって、明日から動こう。……明日が終われば、ずっと、一緒にいられるよ」 ミユウが言うが、ミライは黙ったまま、静かにパンをかじるだけだった。 「よし、明日の準備をしよう」 簡単な食事を終え、ミユウは端末を取り出した。 「ミライ、歌、唄えるよね?」 床の上に端末を置き、すばやくキーを叩く。 「二曲、必要なんだ。もう歌手活動はできなくなるから、これがミライの最後の曲になる。……ミライのファンに、最後のプレゼントだよ」 言われたミライは視線を窓へと向けた。 淡い月明かりが優しく注ぎ込んでいる。 その光の先を見つめながら、彼女はゆっくり唄い始めた。 前へ |次へ |
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