《MUMEI》

「いや、白いなぁって。少しそそる。」
「もう、先生のくせに。」

私は火がついたように赤くなる。確かに真っ黒な墨の下から、白い足が見えていて、大根の土を落とすみたいだ。

「とばっちりだったな。」
「私が杉田くんのこと、好きだと思ってるんですね。成原さん・・・。私は他に・・・」

『好きな人、いるのに。』という次に続く言葉を飲み込んだ。

先生は「他になに?」という感じでチラリとこちらを見たが、私は知らん顔をしてみる。それ以上問い質す様子もなく、そんな時はやっぱり大人だなと思う。


足元はほぼ元通りになり、水道の蛇口を閉めた。

「冷えただろ?」

今週に入り、ずいぶん涼しくなっていた。この時期に水洗いは、確かに冷たかった。

「大丈夫です。」
「また。強がる・・・。」
「じゃあ先生が温めてくれるんですか?」

先生はニヤリと笑い、じゃあ、と必要以上に足に触ってくる。

「セクハラ!?」

触られても、先生の手も同じくらい冷たくて、感覚があまりなかった。
だんだん撫でる手が優しくて、妙な気持ちになる。

打ち消すように言葉を発した。

「先生から買ってもらった制服が、汚れなくて良かった・・・。」

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