《MUMEI》

「そうだったの?」

声に振り向くと、光がタオルを抱えて戻っていた。

「あっ。光。」
別にやましいことではないが、隠していたことに後悔が過ぎる。光の顔が一瞬だけ曇った気がした。

「そっか、先生が犯人だったんだ。」

「何が?」
いきなり犯人扱いされて、少しムッとしている。

「だって、奏、制服盗まれて本当に困ってて、おばあちゃんにも頼めないって泣きそうな様子だったのに、休み明けにうちの制服着て来たから、かなり驚いてたたんだよ。」

返す言葉がなかった。ちゃんと光たちには、話しておくんだった。

「俺が黙っとけって言ったんだよ。一人だけ贔屓するのも良くないし。」

私が押し黙っているので、先生はたまり兼ねて、庇ってくれる。

「別に責めてるんじゃないよ。先生がそういう事しても、贔屓じゃないこと、分かってるし。ただ・・・」


「光は、中学の制服を貸してくれそうな先輩のお家を、何件か訪ねてくれていたんだよ。まあ奏は小さいから、バレー部の先輩のじゃ、ぶかぶかでサイズ合わないだろうけど。」

気が付くとバケツと雑巾を持って百花が立っていた。

私は泣きそうだった・・・。さっき墨汁をかけられた時より、込み上げてくる。
「ごめん・・・」
私が俯いて、謝ったせいで、二人は慌てて駆け寄ってくれた。

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