《MUMEI》
上原
私は佐久間の部屋の鍵を返すために会社に戻った。

昼間より夜の方が社員も少なく返すのが楽だと思ったからだ。


裏口から事務所に入り管理部に向かうと、思った通り人がいない。



良かったぁ〜



そして私は鍵を元あった場所に戻した。


そしてその場を立ち去ろうと体の向きを変えると、


「ひゃっ!!」


「おつかれさん…佐藤さん何してるの?」


そこには管理部の上原さんが不思議そうな顔をして立っていた。


「う、上原さん!?いたんですか!!」


上原は三年先輩の男性で、たまに雑談をする程度の仲だった。


「なんだよその言い種!?」


「すいません…さっきまで誰もいなかったので…」


まったく気配を感じなかったので本当に驚いた。


「あ、私……鍵を返そうと思って、それで…」


見られたのでは仕方ないので、それだけ言うと、


「もしかしてお客さんを案内したまま鍵を持ってたんだろ!!」


と、上原は都合よく勘違いしてくれた。


「そ、そうなんですよ〜」


「佐藤さんは鈍臭いなぁ。まぁ、今回は黙っといてあげるよ。そのかわり今からメシ付き合ってよ」

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