《MUMEI》

――…カンッ…コトン…


軽い音を立てて、それはポケットに沈んだ。



だが―――…

悪戯なクッションが、手玉をあらぬ方向へ弾き返してしまった。


その行方を目で追う僕に、中島は唐突に切り出した。


「彼女には男がいるんだ―――……。」


「!!………。」


――――…コトン…!


その時、僕の動揺を嘲笑うかのように、手玉がポケットに転がり落ちた………。

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