《MUMEI》 ◇◆◇ 濡れそぼる草花。 雨は止む事を拒むばかりで衰える気配がない。 「‥‥‥‥‥‥‥」 部屋の一角では、付き人がひたすらに書を睨んでいた。 「ねぇ草薙、何してるの?」 「‥‥‥‥‥‥‥」 「──色々とやる事があるんだよな、こいつ」 「やる事?」 「ああ。こいつは陰陽師なんだ。端くれだけどな」 「見習いと言え」 「はい、はい」 (草薙が──‥) 咲弥がその付き人を見つめていると、彼は振り返った。 「‥‥意外だったか」 「ぇ‥‥ううん。凄いなぁって」 「──────」 何を言うでもなく、草薙は書に向き直った。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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